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2014年7月25日 (金)

岡大ロースクール前期の最終講義で「法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会」の答申について論じてみた

法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会が平成26年7月9日取りまとめたばかりの答申について論じてみた。

答申では、捜査の可視化や証拠のリスト開示についていくらか前進が見られたものの、長期の身体拘束からの脱却についてはなんとも不透明である。

捜査手法として、司法取引や通信傍受の拡大が盛り込まれた。会話傍受(事務所、車内部の会話の盗聴)や被告人の偽証罪の新設などが消えたことには多少ほっとした。

日本の人質司法にメスが入るかと期待していたのだが、刑事司法の新時代を予感させるような内容にはなっていない。

犯罪被害者保護のための匿名化が盛り込まれたが、実務上はとても危険なものを含んでいる。逗子ストーカー殺人事件等の反省に立っているようだが、そもそも起訴状で被害者を匿名にしても訴因が特定されないようなことは絶対に許してはいけない。「セーラー服の女子高生」といった全く話にならない馬鹿馬鹿しい表現まで現れてきているようであり、被害者を守るために被告人(!)の氏名を匿名にしろといった要求が出ることもあり、これに実務が追随した例もあるようである。これを許したのでは刑事裁判の人権保障の基本的な部分が危うくなるというところまで来ているように思われる。駄目なものは駄目だと言わないといけない。

若いロー生諸君は本当に熱心に聞いてくれた。一連の授業を通じて、この時代の刑事訴訟に少しばかり関与した者として、次世代の法曹に語り継げたものが何かあったかというと心許ない。まあ連中が後は何とかしてくれるさ。そう楽観的に考えることにした。




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