カテゴリー「的場の主張」の14件の記事

的場が新聞、雑誌、その他に寄稿した記事のアーカイヴです。

2014年5月26日 (月)

裁判員裁判5年を迎えて【寄稿】 平成26年5月25日(日)山陽新聞朝刊総合5面

【寄稿】 被告人にも選択の道を
裁判員裁判の弁護経験が豊富な的場真介弁護士(59)=元岡山弁護士会長

 裁判員裁判が始まって5年。今年3月末までに全国で6千人を超える被告人が裁判員裁判で裁かれた。そして多くの法曹がこの制度を経験し習熟してきた。もはや特殊な裁判ではなく、標準である。
 開始当初と現在では実務の運用は大きく変化した。多くの人々の工夫と努力で、この制度も洗練され安定したものになりつつある。
 私は、この制度に関して、どちらかというと好意的な印象を持っている。どの事件でも裁判員の方々は熱心に審理に取り組まれていた。みずみずしい感性で、共に怒り、共に泣いてくれる裁判員と一緒に仕事をすることにはやりがいを感じる。
 主権者である国民が関与するようになったことは刑事司法の正当性を強化することにもつながったと思う。そして、素人の裁判員に対して分かりやすく説明する責任を課したこの制度は、日本の刑事裁判に新しい風を入れ、変化を強力に促すことになった。
 私が見る限り裁判員が関与したために非常識な裁判が増えたということはない。性犯罪などで量刑が重くなる傾向が見られるが、それも耐えがたい欠陥とは思えない。少なくとも裁判員裁判よりかつての裁判官裁判の時代が良かったなどと感じたことは一度もない。
 5年前、国民の関与を排除する裁判制度からの脱却は時代の要請であった。世界を見渡しても例がないような息苦しい制度になっていた。裁判官裁判が完全に行き詰まったからこそ、裁判員裁判に変わるしかなかったのであり、今さら回帰することはありえない。
 もっとも欠点はある。この制度が多くの人々を動員し、膨大な時間とエネルギーを必要とする点だ。被告人への心理的負担も大きい。重大な事件であっても、事実に争いがない事件にまで重厚長大な裁判員裁判での審理を一律に強制するやり方は考えものだ。半面、重大犯罪でなくても否認事件については一般市民の健全な判断能力に期待し、被告人が裁判員裁判を選択できる道を開くべきだと思う。
 裁判員裁判導入を契機に刑事裁判は大きく変わった。しかし、長期間にわたる被告人の身体拘束、いまだ残る調書への過度の依存など、改めていかなければならない課題も多く残っており、今後も制度をより良いものに変えていく努力が必要である。

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2013年10月24日 (木)

刑務官の職場は「司法の現場」ですか?

Q
元刑務官の河村龍一氏は、その著書「闇サイト殺人事件の遺言」で、刑務所での経験を「司法の現場」での経験として記述しています。果たして刑務所は「司法の現場」なのでしょうか。

著者は次のように記述しています。7ページ「はじめに」より抜粋。

>刑法学者や有識者と何の繋がりも持たず、法律的知識もない私にとって、本作の執筆は至難なことである。しかし、私には長きにわたり、司法の現場に携わってきた豊富な経験から得た知見があり、犯罪被害者や遺族を始めとした一般社会から負託された、社会正義遂行という情熱がある。司法の現場で構築された哲学で述べてみたい。

拘置所は裁判中の被告を収容していますが、刑務所は刑が確定した者を収容しています。裁判が終わった者を収容している刑務所がどうして「司法の現場」なのでしょうか。それは、刑を執行する「行政の現場」、もしくは「行刑の現場」と言うべきではないでしょうか。

120ページで著者は次のようにも記述しています。

>私が勤務していた施設の受刑者は、制圧する刑務官の人数が少ないほど刑務官の指示に従うようになり、逆に多いほど、卑怯だ、一人では何もできないくせに偉そうなこというな、というような理由から担当刑務官をなめてしまい、以後、その職員の指示に従わなくなる者が多かった。
( 中 略 )
>受け持ち区域の秩序を維持するために、私はほとんど単独で体を張って勤務していた。
(以後省略)

ちなみに、「死刑 究極の罰の真実」(読売新聞社会部・編集)では次のように記述しています(278ページ)。

>これまで裁判に携わる法律専門家は、刑罰の実情を知らないことに何の疑問も感じてこなかった。それは、判決までは司法の問題だが、刑罰の執行は行政の問題だからである。

河村龍一氏は、34年刑務官を務めました。そういう人が自分の職場を「司法の現場」というのは極めて不適切ではないでしょうか。それとも、法律的な知識の乏しいことの表れとして大目に見るべきでしょうか。

河村氏は、法律的な知識はないと言いながらも「豊富な経験から得た知見」があると言っています。その主張には矛盾するところがあるようにも思えるのですが、皆さんはどう思われますか。

皆さんのご意見をお聞かせください。

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2013年1月 3日 (木)

逗子市のストーカー殺人の記事に思う~被害者特定事項の秘匿とその限界

逗子市のストーカー殺人の記事に思う~被害者特定事項の秘匿とその限界
岡山弁護士会前会長 的場真介

本文:

 神奈川県逗子市のデザイナー女性が殺害された事件は,いたましい事件だった。
警察署が昨年6月に脅迫容疑で逮捕した犯人に「逮捕状に記載された女性の結婚後の姓や転居先の住所の一部が読み上げられていた」ことが大きな社会的問題となっており,本誌2012/11/19社説もこの問題を取り上げている。
 確かに警察が逮捕状請求書の「被疑事実の要旨」に被害者の転居先まで書いてしまった点は大いに首をひねる。ただ,その一方で被害者の名前が正確に書かれたことは,責められないことのように思われる。
 逮捕状の執行を受ける市民が,被害者が誰かということも告げられないようでは,捜査から我が身を防御することもできない。被害者の氏名くらいは告げない訳にはいかないし,旧姓だけを伝えることでも足らないように思える。
 ストーカー犯罪等の被害者の保護と被疑者・被告人への適正手続との保障の調和は実に悩ましい問題である。この事件を契機にして,新たな調和点が探求されルール化されることを期待する。
 ところで,性犯罪などの事件では,公判で被害者の特定につながる事項の秘匿を求められること珍しくなくなってきている。(刑事訴訟法290条の2)「A子」などと呼んで被害者の名前を伏せるのが一般的である。更に進んで,被告人の住所・氏名まで秘匿しろという要求が,被害者側から出ることがある。他県の例だが,教え子の女子生徒にみだらな行為をしたとして児童福祉法違反罪に問われた高校教諭の公判が,被告人の氏名,学校名,犯行時期等を秘匿して開かれたという記事を読んだことがある。教師の名前が出れば学校やクラスまでが特定され,被害者が特定される可能性があるというのである。
 また,再婚相手の連れ子(児童)と性的関係をもち,強姦罪などの事件になる場合,被告人の住所や氏名が明らかになると同居していた被害者は容易に特定されてしまう。このようなケースでは被害者特定事項の秘匿の重要性が特に高いことは認めなければならない。しかし,とても悩ましいのだが,それでも被告人の住所・氏名までは秘匿できないと考える。「公判を傍聴する市民に,誰が裁かれようとしているのかもわからないような裁判」は暗黒裁判である。そんなものを刑事裁判とは呼べないと思う。
(山陽新聞平成24年11月25日付朝刊)

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2012年9月24日 (月)

山陽新聞を読んで「実名報道に人権的配慮を」

実名報道に人権的配慮を
岡山弁護士会前会長的場真介
私は最近担当した事件を通じて新聞の実名報道について考えさせられた。被疑者のAさんが逮捕された時、珍しい事件だったせいか、本紙だけでなく全国紙すべてがそこそこの大きさで報道した。そもそもAさんを疑うこと自体どうかなと思える事件であり、その後Aさんは釈放され事件は終わった。
本誌は、Aさんの勾留却下などの際に2回の続報記事を掲載し、逮捕時の実名報道による報道被害を緩和する配慮をしてくれた。この続報記事もあってAさんは解雇等の被害は免れた。しかし、続報記事には実名は出なかったため「Aさんの事件は最初報道された姿とは違ったんだな」と気付いてくれた居住地域の読者は少なかったと思われる。いったん発生した報道被害を回復することがいかに困難かを思い知らされた事件だった。
逮捕されても実際に起訴され処罰されるとは限らない(検察庁は受理した事件の5~6割を不起訴にしている。)。しかし、逮捕された人が不起訴処分になっても記事になりにくいので、逮捕時の実名報道によって発生した報道被害は放置されることになる。
話は変わるが、痴漢やその手の条例違反などの事件の弁護をすると、容疑者の多くはごく普通の家庭の「お父ちゃん」たちだったりする。彼らから「新聞やテレビで報道されますか」とよく聞かれる。逮捕されて途方に暮れる容疑者だけでなく、信じていた夫に裏切られた妻、子供たちにとっても、新聞の実名報道がきっかけで人生が狂ってしまうことがある。親の犯罪報道が原因で子供がいじめにあったり不登校になってしまったという話はよく聞く。容疑者に将来下されるであろう罰金や執行猶予のついた懲役刑よりもはるかに破滅的な効果をもたらすことがあるのが実名報道である。実名報道を契機にして、容疑者とその家族が職場・地域・学校から浮き上がり排除されていく悲劇を目にし、胸を痛めた経験は数えきれない。
もちろん報道機関の活動無しには民主主義を語れないくらいにその社会的効用が大きいことも事実であるが、特に警察発表だけに依存しがちな逮捕時の実名報道が人権侵害を起こす危険が大きいのも事実だ。
日々繰り返される犯罪報道。マスコミの力は市民の幸福な家庭など苦もなく吹き飛ばすくらいの強大さを持っている。強い者は弱い者への配慮を忘れてはならない。マスコミ関係者には報道による人権侵害をできるだけ起こさないように今後とも研鑽を積んでもらいたい。
(山陽新聞平成24年9月24日付朝刊)

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2012年7月22日 (日)

悩ましいハーグ条約

悩ましいハーグ条約

岡山弁護士会前会長 的場真介


国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めた「国際的な子の奪取に関する条約(ハーグ条約)」について、1月26日の社説は「ハーグ条約 子どもの利益を考えたい」と訴えた。これにコメントしようと思ったが、あまりの悩ましさに筆が進まなかった。
国内の離婚事件でも主に母親による子の連れ去りは日常茶飯事である。これまで日本では「やったもん勝ち」であり、家庭裁判所でもそのことを特に犯罪視するようなことはなかった。離婚後は単独親権となることが当たり前とされ、母性優先ということで幼い子の場合であれば母親が単独親権者とされてきた。子を奪われまいと追いすがる父親を牽制するために、些細な暴力を強調して、夫の接近禁止や住居退去を地方裁判所が命令できる「 保護命令 」が発令されることもあった。血涙を流す父親の姿もたくさん見てきた。しかし、お腹を痛めた幼な子を母親から取り上げるような残酷なことはしにくいという考え方から、父親ががまんするのは仕方がないことと割りきってきた。
また、日本人夫から、外国人妻が子を母国に勝手に連れ帰ってしまったという相談も時々受けるようにもなった。
現在ハーグ条約加盟に向けた関連法の整備が進められようとしている。
国際結婚が破綻したため子供を連れて日本に帰った女性が、未成年者誘拐罪で国際指名手配されたり、外国の裁判所から5億円もの損害賠償を命じられたりという事件が取り上げられた。しっかりした議論がされてきたようには思えない。離婚を扱う弁護士の理解も進んでいない。
社説の「子供の利益を中心に」という主張には誰も反対できないのだが、何が子供の利益と考えるかは人それぞれである。
ただ、「子供は親の離婚を望まない。離婚後も両方の親と交流していくことが子供の利益になる。」という考え方が主流になり、離婚後も共同親権(監護権)を持つことが原則型になっていく。
これまで裁判所で離婚をした妻たちは、多くの場合、幼い子供の親権だけは問題なく独占できたし、元夫に子供を会わせることも月1回数時間だけがまんすればよかった。しかし、欧米諸国並みに年間100日程度の交流を保証するという流れになっていくとすれば、女性たちから嵐のような抗議を受けるのではないかと心配している。この女性たちの不満を押さえるために慰謝料等を高額化をすれば、日本の離婚裁判は様変わりするだろう。
この条約は国内離婚にも大きな変化を与えることは必至である。社会に重大な影響を与える制度なので、徹底した議論を尽くすことが必要である。
(山陽新聞平成24年7月27日付朝刊)


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2012年6月 9日 (土)

山陽新聞を読んで 「見直し必要な裁判員裁判」

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2012年3月26日 (月)

山陽新聞「山陽新聞を読んで」【支持できる死刑回避方針】

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2012年2月11日 (土)

事務所名の「不二」のこと、鬼平犯科帳のこと

当事務所の「不二」はフジと読むことにしていますが、仏教用語ととしては、フニが一般的なようです。「現象的に対立する二つのことが根底的には一体であること、差別のないことを説く仏教の教え」のようです。
「善悪不二、邪正一如」などという使い方をされます。善人・悪人といっても、仏の絶対的な公平の前には差別はないという意味だと説明されています。ある人間の視点から見て、都合の良い性質をもった人間が善人とされ、都合の悪い性質をもった人間が悪人とされているだけなんでしょうから、大宇宙のようなスケールをもった仏という存在の視点から見ると、やれ善人だ悪人だと人間が勝手にいっていても、それは目くそ鼻くそみたいなもんで、全く差がないことになるのでしょう。
これと対立する考え方に「勧善懲悪」というのがあります。善人と悪人をバッチリ区分し、正義を愛し悪を懲らしめるというわけです。日本人は昔からこれが好きなようです。歌舞伎やテレビの時代劇なんかも大体これが多いですね。私も「正義の味方」が嫌いなわけじゃありません。ただ、悪人のレッテルを張られる人の哀しみもわかる人間でありたいとは思っています。
私は、刑事弁護にかかわる弁護士の心を表す旗印には、この「善悪不二」がふさわしいと思ったわけです。「風林火山」の旗印みたいなもんです。そういうわけで弁護士法人の看板には私の旗頭を大書してあるわけです。

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2012年1月23日 (月)

山陽新聞「山陽新聞を読んで」【治安は良くなった?】

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2012年1月11日 (水)

資料解題「法曹人口政策に関する緊急提言 関連資料」【平成23年5月岡山弁護士会会報に寄稿】

私が、平成23年5月岡山弁護士会会報に寄稿した記事です。
法曹人口増加に苦悩する弁護士業界の分析と展望について私見を述べています。長文です。

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