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2014年7月12日 (土)

日本の場合併合罪の場合なぜ重くならない

Q
菊池被告の場合や、名古屋新幹線回数券偽造事件を見て思いました。

後者の場合は通貨偽造1件と有価証券偽造・詐欺が3件詐欺未遂1件なのになぜか懲役2年4か月

通貨偽造が無期の懲役または3年以上の懲役で酌量減軽をしても1年6か月のはず
なのに詐欺が3件もあるのに2年4か月の刑はおかしい

菊池被告の場合は爆発物と殺人未遂の併合罪で懲役5年もおかしい。

なお、控訴審で窃盗と公務執行妨害罪で1審で懲役1年6か月の判決、2審で公務執行妨害は無罪窃盗で懲役1年6か月と同じ判決を見たことがあります。

一方で強姦事件を起こした若い犯人は懲役50年だったそうで。

A
○菊池被告の場合や、名古屋新幹線回数券偽造事件の宣告刑の量刑がおかしいかどうかは、裁判記録も見ていないのでなんとも言えません。しかし、感覚的にはそんなもんじゃないのとも思っています。
○法定刑だけ比べてもわからないですが、「こういうケースではこのように量刑した」という過去の膨大な判決例がデータベースとして蓄積されていて、裁判官は当事者(検察官、弁護人)の意見やそういったデータベースを参照しながら、具体的事例にそくした適正な量刑を工夫していると思います。
○いくつかの事実について成立する複数の犯罪について個々に刑を決め、単純合計した刑を言い渡すことにすると、時に何百年などという実際的でない刑になってしまうのです。アメリカなどはそういうやり方のようです。そういう不都合を避けるやめに、上限を決めて、その範囲で裁判官に調整させる仕組みになっています。
○質問者様が指摘されている、「強姦事件を起こした若い犯人は懲役50年だった」というのは回答者も聞いたことがあります。
これは、たくさんの件数の強姦事件の途中に確定判決があって、確定判決前の事件の固まりと確定判決後の事件の固まりについて別々に併合罪加重をしたため、最長が60年(有期懲役(最長は20年)を併合罪とした場合の最も重い刑は1.5倍の30年ということになります。)となり、検察官が60年の求刑をしたところ、宣告刑が50年に落ち着いたのだと思います。
○難しいですが、
併合罪とは、(1) 確定裁判を経ていない2個以上の罪( 刑法45条 前段)、又は (2) 過去に禁錮以上の刑の確定裁判があった場合、その罪とその裁判が確定する前に犯した罪(同条後段)をいうのです。そして、併合罪については、各犯罪について別々に処断刑(判決で言い渡される刑)を決めるのではなく、一括して刑を量定することになります。( 同法46条 - 48条)
○併合罪のうちの1個の罪について 死刑に処するときは、他の刑を科さない。ただし、没収は科すことができる(刑法 46条1項)。併合罪のうちの1個の罪について無期懲役・無期禁錮に処するときも、他の刑を科さない。ただし、罰金、科料、没収は併科することができる(同条2項)。このように、死刑・無期刑については吸収主義がとられている。
併合罪のうちの2個以上の罪について有期懲役・有期禁錮に処するときは、その最も重い罪の刑について定めた刑について定めた刑の長期(刑期の上限)にその2分の1を加えたものを長期とする(同法47条本文)。例えば、 強盗罪(同法236 条、法定刑は5年以上20年以下の懲役)と 恐喝罪(同法249条、法定刑は1月以上10年以下の懲役)が併合罪となるときは、重い強盗罪の刑の長期に1.5倍の加重をして、5年以上30年以下の懲役が処断刑となる。ただし、加重の 上限は30年であり(同法14条2項)、また、それぞれの罪の刑の長期の合計を超えることはできない(同法47条 ただし書)。このように、有期刑については加重主義がとられている。
併合罪のうちの2個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額(罰金額の上限)の合計以下で処断する(同法48条2項)[以上はウィキペディアより]
○このような制度はドイツ法の影響を受けたもののようです。これはこれで合理的な考え方ではないかと思います。

この記事は、@nifty教えて広場に投稿するために書いたものの、回答が締め切られたために投稿しそこなったものです。悔しいのでここに掲載しておきます。

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