相続放棄について
Q
先日、母が亡くなり、プラスの財産はなかったため、兄弟と共に相続放棄の手続きをしてきました。
現在、結果待ちという状況です。
生前母から「自分が死んだら相続放棄は必ずしなさい」と言われていたため、私も兄弟も不勉強のまま言われるがままに相続放棄の申し立てをしてしまったのですが、あとから大変なことに気づきました。
母には返済途中のローンがあり、内訳は、私の成人祝いの振袖です。
母が頑張って買ってくれた大切なものなので、私の気持ちとしては、手元に残しておきたいものです。
ただ、相続放棄をしたら返済が済んでいないものは返さなくてはいけないと知人から聞き、よく考えてみれば当たり前のことなのですが、いまからでもなんとか手元に残しておく方法はないかと質問をさせていただきました。
振袖のローンのみなら今後は私が返済していこうと思うのですが、他にも借金があるようです。
本人でないと残額など細かいことは言えないということなので、相続放棄をせず、いくらあるかもわからない借金を背負うのも怖いという気持ちもあります。
難しいということはわかっているのですが、なんとかなる方法はないでしょうか?
正確な金額はわかりませんが、振袖、帯など全て合わせて100万円ほどだったと聞いたことがあります。
また、母にも兄弟がおり、私の父と母は離婚している、という状況です。
判断材料が不足していたら申し訳ありません。
皆様のお力を貸していただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
A
○「相続放棄をしたら返済が済んでいないものは返さなくてはいけないと知人から聞き、」
→そのアドバイスですが、半分は正しいですが、このケースでは正しくないです。結論としては、質問者様は、そのまま振袖を大切に使われたらいいし、ローン会社等から振袖を返してくれとか、残代金を支払ってくれと言われても、応じる法律上の義務はありません。以下理由を述べます。
○振袖は質問者様の所有物になっていると思われます。そして、質問者様がこれを取得した法律上の原因は相続ではなく、贈与であったと考えられます。質問者様も「母が頑張って買ってくれた」と書かれている通り、お母様は「ローンで購入したためローン会社に所有権が残っているかもしれない商品」をそんなことを意に介さずに質問者様に贈与(プレゼント)したのです。
民法第192条 は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、 善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」と定めています。即時取得という制度です。質問者様がお母様から贈与され占有の移転(引渡)を受けた瞬間に、質問者様は振袖の所有権を突如として原始的(前主から承継したものでないという意味です)に取得し、その反面の効果としてローン会社は所有権を喪失したことになります。
○もちろんローン会社はお母様に対する残代金請求権を持っているわけですから、これを相続人に行使できますが、相続放棄により質問者様には何も言えなくなっています。
○ご友人のアドバイスは、お母様が亡くなられる時点で自分の物として持っていたローン完済前の商品についてはあてはまることも多いです。もっとも、契約書に商品の所有権移転時期などについてどのような条項が規定されているかを検討してみないと、一概には言えないことです。
○質問者様が自発的に払われるのは勝手ですが、回答者はそんなことはしない方がよいと思います。他の相続債権者が返済の事実を知ったら感じが悪いでしょう。
○お母様をしっかりご供養してあげてください。ではお大事に。
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