この状況でも、慰謝料は発生しますか?
Q
4月から別居しています。結婚8年、2歳の子供がいます。
子育てもあり、妻には同居するよう求めていますが、未だ同居しようとはしません。性格不一致もあり、双方離婚することに、同意していますがまだ離婚届を書いて相手に渡した段階で、役所には渡っていません。
もともと僕は海外に単身赴任していましたが、その時に家賃が安く、環境の良い九州に妻と息子が転居しました。2013年4月に東京に帰任しましたが、このタイミングでも東京に戻ることを拒否し、同居も拒否しています。僕も妻も東京が基盤で、九州には縁もゆかりもありません。
妻は、東京は地震がくる可能性が高く、福島原発の影響が、子供の中長期的な成長にどういう影響を与えるかわからないので、東京には戻らないと言います。家族の説得にも応じません。
まもなく、離婚する予定です。条件については、話がついていますが、まだ、離婚は正式に成立していません。
九州の家賃は僕が負担し、生活費は毎月10万円、別途クレジットカードも渡してあるので、婚費は十分だと思います。
夫婦関係は完全に破綻していると言えるはずです。
こんな状況で、僕に彼女が出来て、デートやお泊りしている写真を、相手の興信所に取られた場合、慰謝料の対処になったり、離婚に不利な材料になったりしますか。
妻の実家は資産家なので、探偵に払う200万や300万は、大した負担にはなりません。
実際に、尾行され、監視されている気がします。
A
○こんな状況で、僕に彼女が出来て、デートやお泊りしている写真を、相手の興信所に撮られた場合、慰謝料の対象になったり、離婚に不利な材料になったりしますか。
→なる場合がありますから、そんなことにならないよう十分ご注意ください。
以下、順序だててご説明します。
○最高裁判所平成8年3月26日判決は、「夫婦の一方と第三者が肉体関係をもった場合において、夫婦の 婚姻関係がすでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、第三者は夫婦の他方に対して不法行為責任を負わない。」と言っています。夫婦の一方と第三者が肉体関係を持つことが夫婦の他方に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為と言うことができるからであって、夫婦関係がすでに破綻していた場合には、原則として、夫婦の他方にこのような権利または法的保護に値する利益があるとは言えないからだと言うのです。
○問題は、「夫婦関係がすでに破綻していた場合」だったということを、裁判所がなかなか認めてくれないことにあります。
「別居が開始している」とか、「離婚調停が申し立てられている」とかいう事情があれば比較的認められやすいと思いますが、家庭内別居では足りませんし、質問者様のように別居の原因が「海外勤務」のような夫婦の不和とは別のところにある場合は困難があります。また、別居もある程度継続していないと、婚姻関係の破綻を推定する力が弱いと思います。
質問者様の場合、「双方離婚することに、同意していますが、まだ離婚届を書いて相手に渡した段階で、役所には渡っていません 」と書かれています。「離婚届を書いて相手に渡した段階」では弱いですが、「双方離婚することに、同意しています」という点はそれが真実であり証明可能であれば大変有力な事実になります。
話し合いをした際の録音とか、やりとりした手紙やメールにその趣旨の相手の発言が残っていませんか。
○これらの個々の事情は、それが組あわさって「婚姻関係の破綻」が推認されればいいわけです。
○事実が真実であることと、それを証拠により証明できるということは全く別の問題です。証拠を集めましょう。手っ取り早いのは、相手に「この間渡した離婚届はいつ出してくれるの。早く出してくれないかなあ。」とお願いされることです。そして、「いついつの話だと、別れることはかまわないといっていたのに、どうして?」という問いかけをするのです。相手は、離婚届を受け取っていること、前にそのような発言をしたことを前提にして、出さない理由を説明するでしょう。その会話が録音できれば有力な証拠になるでしょう。(もちろん隠し録りですよ。)
○離婚調停を起こすことをお勧めします。
○ひとつ注意しておくと、「不貞行為」がばれると、その不貞行為が離婚調停が始まった後に発覚したものであっても、相手は「離婚調停前に始まっており、不倫関係を成就するために私が邪魔になったから離婚調停をおこしたのだ」と主張するでしょう。そうじゃないということをどうやってわかってもらうかということもよく考えておく必要があります。
○弁護士との相談を強くお勧めいたします。
○ではお大事に。
この記事はnifty教えて広場に投稿するために書いたモノですが、投稿前に回答受付が締め切られたため掲載にいたりませんでした。悔しいので、ここに掲載します。
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