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2013年11月16日 (土)

裁判の書証の写に「原本と相違ありません」は必要か

Q
準備書面と一緒に、書証の写を提出するとき、その写に「原本と相違ありません」というゴム印を押すことは、必要でしょうか? (裁判関係のゴム印のホームページで見たので、質問しました)

A
そのスタンプを押した書証の写しを見ることは最近はなくなりましたね。そのスタンプが押してある場合は、相手の弁護士さんかそこの事務員さんがご高齢で、昔のやり方をあらためていないだけです。そんなスタンプは必要ありません。
いつから変わったのか記憶が定かではないのですが、民事訴訟規則の改正とかがあった際ではないでしょうか。
私の事務所にも「原本と相違ありません」というスタンプ(「右正写しました」というスタンプもよく使われていました。「正写印」と呼んでいましたね。)はスタンプ箱にありますが、ずいぶん前から使わなくなっています。裁判所でやっていることには、明治(あるいはそれ以前)からの伝統の中で形成された所作や独特の言い回しのようなものがたくさんありました。何十ページでも、「、」だけで文章を下記連ねていって、最後のところ一ヶ所だけ「。」で結ぶ、神社の祝詞のような妙ちくりんな文体を用いていました。それがちょっと玄人ぽくて格好いいと錯覚したりしていました。
私も、根拠もよく理解しないで、先輩のやっていることを見よう見まねで、そのスタンプを押して書証を裁判所に出していました。
今日ではそういうものは簡素化し、言い回しもできるだけ口語化するように努力しています。
今回、質問者様から正写印の意義を聞かれて、わからなかったので、WEB上に何か手がかりがないかと探したところ、下記記事を発見しましたので紹介しておきます。これが正解だと思います。しかし、下記の筆者は何歳くらいの方なんでしょう。
なお、規則とかの改正とかで根拠がなくなっても、以前のやり方がなかなか無くならないこともあります。準備書面の正本・副本なんてものも規則改正でとうの昔に根拠がなくなったのですが、私も含め多くの弁護士(その指導を無批判に受け入れている若手も)は平気で使い続けているでしょう。きっと10年後にも使われているんじゃないかなと思います。

司法界はOA化が遅れた業界ですが、今時さすがに手書きの書面というものは 見ません 裁判官が1人に1台パソコンを支給されたのは平成8年ころだったと思います。なので、判決文の電子データはすべてあります その昔の判決書は、手書き原稿を浄書係に出して、和文タイプで打ってもらっ ていました。ハナガミのような用紙だった時代です 弁護士も手書きで準備書面を出し、いわゆるフォト・コピーが出来る前は、副本は証拠書類に至るまで全て筆写して作っていました。それが弁護士事務所の事務員さんの主な仕事だったのです。間違いなく写し取りましたというしるしに、「右まさに正写しました。弁護士何某」と弁護士印を押すこととされていました。

【補足】
丁寧なご解説をありがとうございました!
昔の、手書きで移していた時代の名残、ということなのでしょうね。
ところで、「正本・副本なんてものは規則改正でとうの昔に根拠がなくなった」の意味を少し教えてもらえませんか?
今でも、訴状については、「副本」として印鑑を押して出していると思いますが・・・。

【追加A】
○「正本・副本なんてものは規則改正でとうの昔に根拠がなくなった」の意味を少し教えてもらえませんか?

これは準備書面のことね。民訴法改正前は、直送主義ではなかったし、特に準備書面は裁判所が送達すべき文書だったんです。それで、準備書面については、正本と副本を提出して、副本を送達してもらうことをしていたのだと思います。
今は準備書面などは直送するのが原則ですし、ファックスで送付するなんてことが当たり前になっていますから、送られるのは準備書面の単なる写しなんですね。それをいまだに正本・副本ってやってるのは、これは惰性というか弁護士の不勉強のせいかなと思った次第です。

○今でも、訴状については、「副本」として印鑑を押して出していると思いますが・・・

裁判所から送達してもらう必要がある書面は副本それ以外は写しという感覚でいいですかね。特に訴状の送達については副本でしなければいけないという規定があったですね。
副本は、原本の写しではなく、それ自体が原本として扱われる重みをもった書面と理解していますが、実際には副本も写しもあまり区別したことはなかったように思います(もしかしてそれは私だけ)。昔も今も、証拠書類の写しの綴りにも正本・副本のスタンプを押して、法廷で平気でやりとりしてきたような気もしますが、ひょっとすると私はとても恥ずかしいことをしてきたのでしょうかね。
法廷で普段は何も考えずに習慣でやっていることも、一度考え出すと不思議に満ち満ちていますね。
まあ、弁護士は勝訴判決を得るのが仕事なんで、そういう形式面は書記官にお尋ねしてそのご指示通りにして、自分で深く考えることはしなくなっています。そういうところに気がつかなくなるのも老化の一種かもしれません。

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