裁判官の犯罪かも
Q
知人の悩みです。
民事裁判は終結しています。一審では「本人調書」が取られていてしっかり残っています。 三審の最終判決文を読んで(変?)と感じて、裁判所に出向いて裁判記録を閲覧したら、記録に欠けているものが、二つあったそうです。一つはある銀行からの回答書。(これは大した証拠ではない)ということですが、あと一つが「裁判中に原告と被告をそれぞれ、尋問していたのにその記録が一切残されていなくて」尋問は無かったことになっています。原告と被告は一緒に並んで、宣誓をした上で証言したにも関わらずです。汚名を着て敗訴になっているので知人は大変なショックを受けています。裁判を依頼した弁護士もこれには何も云わないので、どうしていいのか分からないそうです。こんなひどい裁判があっていいのでしょうか?裁判官や書記官の犯罪ではないのでしょうか。
教えていただきたいです。
A
残念な訴訟結果になってしまったようですね。知人の方のご心痛お見舞い申し上げます。
自分が正義と考えるものが認めてもらえない悔しさ悲しさには敗訴を経験したものでなければわからないものがあります。また裁判というものも神ならぬ人間がすることですから、間違いもあるでしょう。しかし、三審まで闘っても覆らなかったというのであれば、その結果は厳粛に受け入れるしかないと思います。
○質問文の「一審では『本人調書』が取られていてしっかり残っています。」と、「裁判中に原告と被告をそれぞれ、尋問していたのにその記録が一切残されていなくて」という部分は全く矛盾しているようにも思えます。あるいは、二審でされた本人尋問のことなのでしょうか。
一審が簡易裁判所の事件でしたら、録音体が残っているだけで、本人や証人の尋問調書がそもそも作成されないのが普通です。
○あるいは一審で本人尋問調書(それも逐語的に採られたボリュームのある調書)がきっちり作られているということであれば、二審は事情確認や和解勧告をする前提で事実上少し聞いてみたが要約調書(書記官が要点だけを簡略にまとめたもの)を作成したか、調書化までは要しないと裁判官が判断したのではないかとも思えます。民事訴訟規則第68条は裁判長の許可があったときは、証人、当事者本人録音テープ等に記録し、これをもって調書の記載に代えることを許しています。
○知人の代理人の弁護士も問題視していないようであり、なにかの誤解が生じているだけなのかも知れません。
○いずれにしても質問文だけから判断ですが、「裁判所の犯罪」の臭いは私にはしません。まずは担当された弁護士の先生とよく協議してみてください。
【補足】
一審は地方裁判所で始まり、敗訴、控訴、という経過で、
事件名が変わって、再び地方裁判所で提訴されて、その時に当事者、三人の証人尋問があったにも関わらず、一切の記録が残されていません。それをある弁護士が「証人尋問は無かったのだ」と言ったので、事実「証人尋問はあったのに」変だと思っています。その弁護士はそれ以上そのことをその場で発言できない立場でしたから、別の人に相談するしかないのです。
【追加A】
「事件名が変わって、再び地方裁判所で提訴されて、」という部分は二審で「破棄差し戻し」にでもなっていない限りは起こらないように思えるので、とても引っかかります。そのあたりにこのミステリーを解く鍵があるのかも知れませんね。
例えば一審が損害賠償請求事件だと、二審は損害賠償請求控訴事件、三審は損害賠償請求上告受理申立事件などと名前が変わりながら、上へ上へと裁判所が上がっていくはずなんです。そうなっていないのは、本線の事件の流れと全く別の訴え(本線の事件と全く別の事件番号が振られ、記録も独立して存在します。)が地裁に提起されて、そして、その事件の中で問題の本人尋問が行われ、判決・和解・取下などがあったのかもしれません。そうだとすると、この支線の事件の記録は、独立して裁判所のどこかに存在し、本線の記録の中にはないことになります。本線の事件の記録を閲覧して出てこないとすれば、支線の事件の記録が存在しないかよく調べてください。
地裁で当事者名から事件を検索してもらうと、支線の事件が出てくる可能性があります。
【再Q】
裁判中の記録について
民事裁判で和解の手前で証人尋問があり、原告、被告とも尋問がありましたが、その尋問調書がどこにも残されていません。最終判決が確定したあとで、裁判記録を閲覧しても無かったのです。
裁判の記録はすべて調書として残こされると聞いていますが、録音したものは無く、書記官は「尋問調書は私が書きました。あります。」と言いました。しかし現実にどこにも存在しないのです。
担当した弁護士は沈黙のままです。これはどういうことになるのでしょうか。
裁判官と弁護士の間に何かあった・・。というか、責任はどこにあるのでしょうか。
専門の方教えてください。よろしくお願いします。
【再A】
○前回のご質問に回答させていただいた者です(http://oshiete1.nifty.com/qa8299838.html)。前回はミステリーのままで終わってしまいましたが、今回の修正されたご質問を拝見し、モヤモヤが晴れましたので、以下のとおり回答し直します。
○本人尋問調書については、記載が省略されたために存在していないのです。そして、その記載省略は合法的なことであり、裁判所にも書記官にも代理人弁護士にも全く責任はありません。根拠条文は民事訴訟規則67条2項です。
○民事訴訟規則第67条
口頭弁論の調書には、弁論の要領を記載し、特に、次に掲げる事項を 明確にしなければならない
一 訴えの取下げ、和解、請求の放棄及び認諾並びに自白
二 法第147条の3(審理の計画)第1項の審理の計画が同項の規定により定められ、又は同条第四 項の規定により変更されたときは、その定められ、又は変更された内容
三 証人、当事者本人及び鑑定人の陳述
四 証人、当事者本人及び鑑定人の宣誓の有無並びに証人及び鑑定人に宣誓をさせなかった理由
五 検証の結果
六 裁判長が記載を命じた事項及び当事者の請求により記載を許した事項
七 書面を作成しないでした裁判
八 裁判の言渡し
2 前項の規定にかかわらず、訴訟が裁判によらないで完結した場合に は、裁判長の許可を得て、証人、当事者本人及び鑑定人の陳述並びに 検証の結果の記載を省略することができる。ただし、当事者が訴訟の 完結を知った日から1週間以内にその記載をすべき旨の申出をしたと きは、この限りでない
○民事の裁判所は、本人尋問を実施して、その直後に、和解を勧告することがあります。当事者としても双方の話を直接聞いた裁判官がする勧告ですから、説得力があるでしょうし、拒否してもその裁判官が判決を言い渡すだけですから、なかなか拒否しづらいことになるわけです。
そこで、突然和解が成立して訴訟が「判決によらないで終了」するわけです。訴訟が終了しているのに本人尋問調書(当事者本人の陳述が記載されます)を作成するのは時間と労力がもったいないというわけで、その作成を省略することを許したのがこの規定です。
○なお、質問文の「最終判決が確定したあとで」は「和解が成立したあとで」と読み替えました。また、「書記官 は「尋問調書は私が書きました。あります。」と言いました。」という部分は聞き違えかなにかと考え無視しました。
■このQ&Aは、的場が、「bengofuji」のペンネームで「@nifty教えて広場」に回答した記事を、個人的にコレクションしているものです。また、質問部分については、長いすぎるものや質問者を特定する手がかりになりそうな記載は適宜短縮等しております。
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