土地の境界線
Q
実家の母が他界したため家、土地を相続することになりました。
その土地には私道が隣接しており、その私道は隣の家の方との共同登記となっています。
ただし、その私道が狭かったので隣接した畑の所有者の方から50cm幅で長さ20メートル程を母のみが30年ぐらい前に購入しています。
しかし、購入した際に土地を売った旨の記述をした手書きの領収書(相手方の印は押してありますが実印かどうかは不明)のみしか確認できず登記をした形跡がありません。また、その領収書の裏に手書きの地図が書いてあり買った土地の幅、長さがは鉛筆書きで書いてあります。
なお、実態は道幅が広げられており、レンガで畑との境界が作ってあります。
このような場合、どいう処置をしておけば良いのでしょうか?
そもそも隣の土地との境界は所有者同士がきめてブロック塀などを作ってしまえば、それが境界として正しくなるのでしょうか?
どなたか素人にわかるように回答頂けると助かります。
A
1 たかが幅50センチの農地の時効取得の問題なのですが、農地法という特殊な法律がからむので、思いの外やっかいかも知れませんね。甘く見ない方がいいですよ。
権利の登記のプロである司法書士や表示登記のプロである土地家屋調査士と相談しながら慎重にやらないと、裁判所が万能だと信じている弁護士だけの感覚では火傷することもないとは言えません。現に私は何度か大火傷しかけて、すっかり「農地法恐怖症」になっています。
2 農地を移転する場合には、農地法第3条よる知事の許可が必要です。許可を得ないでした売買は無効とされ、違反行為については罰則があり、原状回復をさせられることもあります。母上がされた売買は農地法上は無効であったので、登記ができなかったものと思われます。
3 しかし、農地についても時効取得が認められること自体は最高裁判例もあって明らかなのです。そして、時効取得時効による農地取得では農地法上の許可はなくても登記の移転をすることが可能となります。
法律の抜け道とも言えるこのような方法を使って、農業従事者でもない者が、時効を偽装して農地を取得してしまう悪用もあるようです。
もちろんこの脱法行為は、農地法違反であり、罰則が適用されかねません。
4 時効による農地取得の登記申請があった場合は、通達(下記リンク参照)により、登記官は関係する農業委員会に通告し、また司法書士が申請代理人になっ ている場合には、司法書士から事情聴取を行うなどして、農地の違法取得を抑制する取扱いになっています。
5 また、所有権の移転登記は、共同申請が原則です。しかし、違法だと言われかねない行為なので、登記義務者も簡単に協力して大丈夫かという懸念があります。そうすると、所有権登記手続請求訴訟という裁判を使っておいた方が安全かなと思います。
6 また、所有権の取得まではこれでいけるとしても、今度は地目を変えるときに、また別の通達(下記リンク参照)が絡んできます。
7 私の取り越し苦労かもしれませんが、やはり万一のことがあってはいけませんから、裁判に関しては弁護士でしょうが、その弁護士に司法書士・土地家屋調査士と緊密に連携して遺漏なきよう慎重に事を進めていただくことをお勧めします。私は、同種の事件を扱った経験が乏しいのでこれ以上のアドバイスは自信がありません。司法書士・土地家屋調査士の方が補足してあげてくださるとありがたいです。
8 そもそも隣の土地との境界は所有者同士がきめてブロック塀などを作ってしまえば、それで境界として正しくなるのでしょうか?
↓
境界線は公法上の線であり、そんなことでは境界線は変更されないとされています。しかし、時効により、本来の境界線と当事者が勝手に決めた線に挟まれた土地について取得時効が進むことになり、所有権が移転することにもなっていきます。しかし、間の土地の所有権が移転しただけのことで、境界線が移動したわけではありません。
ではお大事に。
参考URL:http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/publish/monthly_report/201107/data/201107_14.pdf
■このQ&Aは、的場が、「bengofuji」のペンネームで「@nifty教えて広場」に回答した記事を、個人的にコレクションしているものです。また、質問部分については、長いすぎるものや質問者を特定する手がかりになりそうな記載は適宜短縮等しております。
« HPは書証の原本確認にはならないのでしょうか? | トップページ | 死亡交通事故と刑罰 »
「民事事件・その他」カテゴリの記事
- スポーツ練習中に相手に怪我をさせてしまった(2014.10.21)
- 自己破産で通帳コピーの提出について(2014.10.21)
- 自己破産している可能性は?(2014.09.16)
- av登録(2014.08.17)
- 口頭退職の社員が不当解雇と話を変えた(2014.08.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント