親権者と監護権者の分離
離婚に際して、夫が「親権だけは絶対に自分がもつ」と主張して譲らない場合に、親権と監護権を分離させ、夫が親権を、母親が監護権をもつことにして解決することがあります。
親権には「身上監護権」と「財産管理権」
親権は、未成年者の子に対して父母が監護教育するために認められた権利義務の総称ですが、身上監護権と財産管理権の2つに分類することができます。監護権をもつというのは、事実上、子どもの世話をして教育をするだけでなく、子の居所指定権、懲戒権、職業許可権等を行使します。そして、親権を有するものは監護権以外の財産管理権、例えば売買や雇用について未成年者を代理して契約を結ぶということになります。
親権者と監護権者を分離することで
子の福祉や利益にかなう場合もある
離婚の際、離婚をめぐる感情の対立や子を確保したい一心で、親権をめぐって激しい対立が起きがちですが、親権者は子どもの利益にかなうよう決めることが必要です。裁判所が親権者と監護者を分離させることが子どもの利益にかなうと判断したケースは、例えば、今監護している親が身上監護者としては適任だが、財産管理者としては不適任な場合、今監護している親の監護の実績を見てから親権者を指定すべき場合、父母ともに親権者となることに固執しており、子のため早期に解決すべき場合―などです。
また親権者と監護権者とを分けることで、共同親権に近い状態を作ることが子の福祉にかなう場合もあります。
子のために協力関係を築くことが大事
もっとも、父母の感情的な対立が激しい状態で親権と監護権を分属させてしまうと、その後お互いに子に対する権利を主張し合って処理が滞り、かえって子どものためにならないことも容易に想定されます。
対立状況が激しい状況での親権と監護権の分属には慎重になるべきですが、あえて親権と監護権の分属をさせる場合は、親権者と監護権者が子のためお互い協力していける関係を持ち続けることが、最低限必要になるでしょう。
東川芳美先生
弁護士法人不二 的場真介法律事務所 東川芳美先生
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奈良県奈良市出身。京都大学法学部卒業。京都大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。民事、家事を中心に多様な事件を取り扱う。「迅速かつ丁寧な仕事を心がけています。お気軽にご相談ください」
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