復氏について
Q
母が父と別居後,死別して20年になります。事情があって、母が旧姓に(復氏?というのですか、)
戻ることを希望しています。
1.簡単にできるでしょうか?
2.また母は高齢のため代理で子供である相談者ができるのでしょうか?
3.子である相談者が母の旧姓の戸籍に入ることはできますか?(その場合相談者は既婚ですので離 婚が前提です。)
よろしくお願いします。
A
1.簡単にできるでしょうか?
↓
復氏届を提出するだけですから、手続きは簡単にできます。復氏届とは、婚姻により氏を改めていた方が、配偶者が亡くなりになられた後、婚姻前の氏にもどるための届出のことです。
届出人 生存配偶者のみ
必要書類 戸籍謄本1通(提出する役場が本籍地の場合は、不要です。)
なお、復氏届をしても、亡くなられた配偶者の方の親族との姻族関係は継続します。姻族関係も終了させるときには、姻族関係終了届を提出します。
2 母は高齢のため代理で子供である相談者ができるのでしょうか?
↓
戸籍の届出は、届出人本人が行うべきですから、代理人が届け出をするという考え方はしません。届書を届出人本人が記載して、使者(届出人以外の方)が窓口に持ってきても構いません この場合、代理人ではなく使者ですから、委任状は不要です。ただ、使者の本人確認を要求されるので、使者の方は免許証や写真付き住民基本台帳カード等を持参されることが必要です。
ただ、母上が自分で意思決定できない場合は話になりません。
3 子である相談者が母の旧姓の戸籍に入ることはできますか?(その場合相談者は既婚ですので離婚が前提です。)
↓
婚姻により氏を改めた人は,離婚をすると婚姻前の氏(旧姓)に当然戻ることになります(これを「復氏」といいます)。ただし,結婚時の氏を離婚後もそのまま名乗っていきたい場合は,離婚の日から3ヵ月以内に,戸籍法上の「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を出せば,結婚していたときの氏を名乗ることができます。
ご両親の戸籍は父上の死亡と母上の復氏によって除籍になって残っていないと思われます。そのような場合にはご両親の戸籍には戻れません。旧姓に戻った質問者様を筆頭者とする新戸籍ができることになると思います。
ということで、質問者様が離婚して復氏後の母上の戸籍にすぐに入るということにはならないと思います。
しかし、母上の婚姻前の旧姓を名乗るには、離婚した質問者様が復氏後の母上と養子縁組をして養子になるという手はあると思います。実子を養子にすることは可能です。養子は養親の氏を称することになります。
補足
一つ一つご丁寧に回答いただき誠にありがとうございます。
「質問者様が離婚して復氏後の母上の戸籍にすぐに入るということにはならないと思います。」
上記に関してもう少し何故ダメなのかを教えていただくことは可能でしょうか?
実子を養子にできるんですね?!初めて知りました!その手続きも代理でできるのでしょうか?
複雑な事情があり全て申し上げられませんが、亡くなった父とその縁者からひどい目に合わされましたので、けじめをつけたいそうです。ただ、体調悪く高齢ですので、実子の相談者が使者として手続きできるのは助かります。お墓も実家のお墓に入りたいそうです。
よろしくお願いします。
追加A
1 「質問者様が離婚して復氏後の母上の戸籍にすぐに入るということにはならないと思います。 上記に関してもう少し何故ダメなのかを教えていただくことは可能でしょうか? 」
↓
離婚・離縁等による復氏者の籍について戸籍法第19条は次のように規定しています。
「婚姻又は養子縁組によつて氏を改めた者が、離婚、離縁又は婚姻若しくは縁組の取消によつて、婚姻又は縁組前の氏に復するときは婚姻又は縁組前の戸籍に入る。但し、その戸籍が既に除かれているとき、又はその者が新戸籍編製の申出をしたときは、新戸籍を編製する
2 前項の規定は、民法第七百五十一条第一項の規定によつて婚姻前の氏に復する場合及び 同法第七百九十一条第四項の規定によつて従前の氏に復する場合にこれを準用する」
そうすると、質問者様が戻るべき戸籍は「婚姻・・・前の戸籍」ということになり、復氏により新しく作られた母上の戸籍ではないことになります。また、婚姻前の戸籍は父上が死亡により、母上が復氏により、質問者様が婚姻により抜けていますから、もぬけの殻となり除籍になっている可能性があると考えたわけです。
したがって、質問者様が復氏後の母上の新戸籍に入るには養子縁組でもするしかなかろうと考えました。
2 実子を養子にできるんですね?!初めて知りました!その手続きも代理でできるのでしょうか?
↓
代理ではできません。しかし、お母様と質問者様が共同して作成した養子縁組届(証人の署名が必要です)を使者に届けてもらったり、郵送提出することは可能です。
3 複雑な事情があり全て申し上げられませんが、亡くなった父とその縁者からひどい目に合わされましたので、けじめをつけたいそうです。
↓
言うに言われぬ歴史があるんでしょうね。質問者様が親孝行をして差し上げてください。
ではお大事に。
回答の一部訂正
嫡出子である質問者様を母上が養子にすることはできない扱いのようです。この点、先の回答を一部訂正します。
しかし、非嫡出子であれば実子を養子にすることは広く認められてきました。これは現行法上は非嫡出子(婚外子)の相続差別がある(つい先日、最高裁判所平成25年9月4日大法廷決定が、民法900条4号ただし書の規定のうち、嫡出でない子の相続分を嫡出子の 相続分の2分の1とするのは、憲法14条1項違反としました)ので、これを平等にするために養子とすることが行われてきました。
民法上の制約としては年長者養子の禁止くらいのものなので、兄が実の妹を養子にしたり、夫が離婚した妻を養子にすることは全然問題ないのに、氏を変える手段として実子を実親の養子にすることがどうしてだめなのか、私にはよくわかりません。婚外子だけは認めるというのはご都合主義のようにも思えます。
そうなると、あなたが氏を変えて、母上の戸籍に入ることは困難なように思います。母上と氏を一致させるだけなら、裁判所の許可を得て氏を変更するとか、母上の旧姓を名乗る親族との養子縁組を考えることになるのでしょうか。
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