控訴審での請求の原因変更について
Q
控訴審で一審の訴状の請求の原因が多すぎて論点がはっきりしないために同趣旨で簡略化といった目的で変更したいのですが控訴審で裁判所は認めてくれる確率はどれくらいありますか?
今回の例
1~10の被控訴人のした事実の羅列を1つに絞り「被控訴人から精神的に損害を受けた」
もし認められることが難しいならよい書き方を教えて下さい
A
○ご質問が抽象的すぎてとても回答しにくいです。したがって、一般論と感想くらいしか申し上げられません。
○控訴審で一審の訴状の請求の原因が多すぎて論点がはっきりしないために 同趣旨で簡略化といった目的で変更したいのですが 控訴審で裁判所は認めてくれる確率はどれくらいありますか?
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民事訴訟の控訴審の構造から言って「請求原因の変更」自体が認めてもらえないということはないと思います。控訴審から受任した弁護士は、従来の主張を勝てそうな主張にバッサリ組み換える必要に迫られることも多いので珍しいことではありません。
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民事の控訴審では最初の段階(控訴から50日以内に)で控訴人は控訴理由書という書面を提出して、原判決のどこが間違っているから原判決が取り消されるべきなのかという理由を指摘し、控訴審での争いの範囲を明示しなければなりません。
「請求原因の変更」をやるなら、控訴理由書までにしておかないと、控訴審のテーマがひどくぼやけたものになってしまいそうです。
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「同趣旨で簡略化」というだけなら、やっても意味が乏しいかもしれません。というのは、おそらく質問者様の訴状はかなり散文的にトラブル(紛争)の経緯が記述してあるだけなのだろうと想像します。
原判決は、その中から、請求原因として意味がある事実(原告が求める法的効果を導くために法が要求している要件事実に該当する事実)を抽出して「原告の主張」や「争点」として整理しているはずです。
源判決のその部分が質問者様の意図に合致しているかどうかをまず検討されるべきでしょう。
○「今回の例 1~10の被控訴人のした事実の羅列を1つに絞り『被控訴人から精神的に損害を受けた』とする。」という記述から判断して、不法行為に基づく慰謝料請求をされているようですね。
不法行為に基づく損害賠償とう法律効果が生じるための法律要件としては、
(1)違法行為(違法性)
(2)故意または過失
(3)因果関係
(4)損害
が必要です。これにあたる具体的事実が過不足なく主張されていなければなりません。
従来の主張のどこを見直す必要があるかを分析するには、原判決が(1)~(4)のどの部分を認めなかったために法的効果が否定されたのか、それは主張の仕方がまずかったのか、証拠が足らなかったのか、単に裁判所が判断を誤っただけなのかを、正確に見極めなければなりません。
↓
「同趣旨で簡略化」という質問者様の書きぶりから判断して、どうもこのあたりの理解が決定的に欠けているような気がします。同じことをただコンパクトにしただけでは、法的な主張としては何も変わらないことをくりかえすことになり、あまり意味がありません。
法廷では「日本語のような言語」が使われていますが、あれは「法廷語」という別の言語なのかもしれません。また、訴状や原告側の準備書面に書いてあるのは、一定の法的効果が発生させるための要件事実(何が要件事実かは法が定めている)の存在の主張と証拠を踏まえた論証なので、日本語のように見えて実は数式のようなものとおもっています。ということで、「法廷語」や「数式」に明るくない質問者様に今必要なのは弁護士という通訳兼ガイドです。少なくとも、弁護士の法律相談だけは受けてアドバイスを受けておかれることをお勧めします。
○よい書き方を教えて下さい。
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与えられた情報では全く無理です。弁護士に過去の裁判資料全部を検討して、書いてもらったほうがいいと思います。このままではいいことにはならないような気がします。
○では、お大事に。
■このQ&Aは、的場が、「bengofuji」のペンネームで「@nifty教えて広場」に回答した記事を、個人的にコレクションしているものです。また、質問部分については、長いすぎるものや質問者を特定する手がかりになりそうな記載は適宜短縮等しております。
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