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2012年6月 9日 (土)

山陽新聞を読んで 「見直し必要な裁判員裁判」

Data75506


山陽新聞を読んで 「見直し必要な裁判員裁判」
岡山弁護士会前会長的場真介
5月20日の社説「裁判員裁判3年 刑事司法に風穴を開けた」は、裁判員制度
が「おおむね順調」との評価を得ていることを報じている。
その一方で、裁判員裁判をやってみて、手直しの必要を感じさせる点が少なくな
いのも事実である。裁判員裁判の3年目の見直しが行われている最中であり、こ
の機会に私見を述べたい。
社説は、「性犯罪や傷害致死事件で、裁判官だけの裁判に比べ量刑が重くなる厳
罰化の傾向がみられたり、執行猶予判決に保護観察が付く割合が施行前の2倍近
くになった」ことを指摘している。市民参加の刑事裁判は、無罪率は高くなるが、
そこで有罪とされた場合は裁判官の裁判よリ重罰になりやすいと米国の陪審員裁
判でも言われている。また、裁判員裁判の弁護をすると、裁判官席の雛壇の隅か
ら隅まで、裁判官3名と裁判員6名の9名(実際には予備の裁判員数名が加わる)
が人の壁のように並び、その圧迫感はプロの弁護人の足さえすくませる。
重大事件であっても争いのない事件についてまで、このような重厚長大な手続を
する必要があるのか疑問であるし、裁判所の限られた資源でそんな運用を安定的
に続けていけるかも疑問である。「重罰化が予想され、被告人への圧迫感も強い」
裁判員裁判を、事実を争わず裁判員裁判を望まない被告人にまで強制するのもい
かがなものか。
反面、人が死んでいる重大事件でなくても、正に市民のバランス感覚に頼って無
罪を得たい事件もある。例えば、冤罪を訴えている痴漢事件やわいせつ図画の事
件等については、裁判員裁判は威力を発揮できるはずだ。
被告人に、「裁判員裁判を選んで無罪獲得をめざすか、裁判官裁判を選択して量
刑面で軽い判決をめざすか」の選択権を与えるのが現実的ではないかと考える。
アメリカの陪審制はそのようになっている。
制度開始当時の緊張感が次第に薄れ、裁判官裁判時代の書面中心の裁判への回帰
傾向も感じなくはない。裁判官裁判が行き詰まったところから始まった新しい裁
判形態であり、今さら裁判官裁判には戻ることは到底考えられない。裁判関係者
はこの制度の趣旨を生かすために今後も不断の努力を続けなければならない。
また、死刑判決の評決要件を多数決でよいとしている我が国の制度は、死刑存置
国の中でも稀有な存在なのであり、死刑を軽々しく運用されている印象を与えな
いためには全員一致か特別多数決によるべきである。

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