数年前の家賃滞納
■質問
数年前の家賃滞納
店舗を貸しているオーナーです。
2011年12月で退去された店舗があるのですが、2009年3月分と2010年4月分と2011年6月分の合計3ヶ月分が支払われていないので、退去時にその請求をしたのですが、「そんな昔のことを言われても支払えない。」と言われました。
当方の家賃管理の甘さもあるのですが、滞納分の3ヶ月は支払ってもらえるのでしょうか?
もし、支払う義務があり、支払ってもらえないとしたら、訴訟になると思うのですが、どのような手続きを行えばいいのでしょうか?
■回答
支払いのない3か月分の賃料は、今回の場合は幸いにしていずれも時効にかかっていないので請求できます。敷金充当、賃借人や保証人への請求(内容証明郵便での請求)、民事訴訟(滞納金額等によって若干の選択肢はあります)などの方法で回収を考えていくことになります。
手続き的なところはこの辺をあたってみてください。
http://www.courts.go.jp/saiban/syosiki_minzisosyou/syosiki_02_08/index.html
気になったことがあるので、少し、余計なことを書きますね。
賃料の時効は定期金債権として5年です。そして、仮に今回の家賃滞納が5年以上前に始まっていても、現在延滞になっている賃料は、普通でない処理さえしていなければ、明渡に一番近いところから遡って3か月分になるはずなので、時効にはかかっていないのです。
当月に支払われるべき家賃が支払われなかった場合に、翌月に入金した家賃は、原則として、翌月分でなく支払いが遅れている当月分に充当されます。これは、後記の民法489条の法定充当が適用されるのでそのような結果になります。
ところが、翌月に受け取った家賃をわざわざ翌月分と指定して充当してしまうと、当月分の滞納がそのまま残っていってしまい、5年の経過で時効にかかってしまうこともありえます。これは後記民法488条が適用されるからです。
普通は家賃の領収証に「何年何月分の家賃として」とは書かない家主さんがほとんどだと思うので、法定充当になるのです。
ただ、質問者様は、明らかに「何年何月分」というところに非常に強いアクセントを置いて質問されているので、「何年何月分の家賃として」とわざわざ領収書に書いて指定充当をされてないだろうかとの一抹の不安を感じてしまったのです。もしそいのようなことをされているなら、止められた方がいいですよ。
質問者様の几帳面な性格が、先々で仇となってはと思い、ついつい老婆心で申し上げました。失礼しました。
では、お大事に。
記
【民法の関連条文】
弁済の充当の指定
第四百八十八条 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする 数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての 債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる
2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない
3 前二項の場合における弁済の充当の指定は、相手方に対する意思表示によってする
法定充当
第四百八十九条 弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従いその弁済を充当する
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する
二 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する
三 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する
四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する
■このQ&Aは、的場が、「bengofuji」のペンネームで「@nifty教えて広場」に回答した記事を、個人的にコレクションしているものです。また、質問部分については、長いすぎるものや質問者を特定する手がかりになりそうな記載は適宜短縮等しております。
« この場合休業補償を受けられるのか教えてください。 | トップページ | 売春について »
「民事事件・その他」カテゴリの記事
- スポーツ練習中に相手に怪我をさせてしまった(2014.10.21)
- 自己破産で通帳コピーの提出について(2014.10.21)
- 自己破産している可能性は?(2014.09.16)
- av登録(2014.08.17)
- 口頭退職の社員が不当解雇と話を変えた(2014.08.17)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント