再婚相手と子の養子縁組後の養育費減額調停について
■質問
私は10年程前に元夫の浮気が原因で離婚し元夫から慰謝料と養育費を調停調書に基づいてもらっています。
私は数年前に再婚し子は再婚相手と養子縁組をしました。
最近元夫がそれに気付いたのか?養育費の減額調停をしてきました。
この間調停に行きましたが、明らかに相手が調停員に下記のような嘘をいっています。
(明らかに嘘だと解っていますが、証明するものがなく調停員には口頭でしか伝えることは出来ませんでした。)
(1)元夫の収入が少なく、あちこちから借金をしているとのこと。
(2)元夫の現在の妻が毎日長時間の仕事にをしているのに、病弱の子どもがいるので手が離せな
く働けないので収入がない。
以上のようなことで、生活が苦しいので養育費を減額して欲しいとのこと。
調停委員は相手方の言葉を鵜呑み(相手の言葉だけで証明書もないそうです)にし、私には私の再婚相手が子ども2人を養子縁組しているので、裁判官の審判にかかると養育費が0円になる可能性が高いので、ある程度の額で妥協しなさいと言います。
また、養子縁組してるから、減額は当然といった感じです。
今の夫も先妻との子に養育費をはらっていますし、持病もあり通院代などかさみとても生活に余裕などありません。(正直前夫からの養育費が無いとマイナスになります。)それは、調停委員にもエビデンスを提示してますが、真剣に見ている様子はありません。
そこで、次回の調停までにはまだ時間がありますので、(1)、(2)については、調べたら明らかになりますが、調停中に当事者が調べても(証拠を得る)良いものなのでしょうか?または、調べても無駄なことでしょうか?
それと、今の夫と私の子との養子縁組を一旦解消しようかとも思いますが、今の段階では遅いでしょうか?どなたか、ご存じなかた教えていただけませんでしょうか?
しかし、もともと離婚の原因は元夫の浮気(相手は現在元夫の妻)で、調停調書を交わしている事項を、後から事情が変わった(自分勝手な)からと言って、変更できるなら、何のために離婚時に調停をしたのか解りません。さんざん苦しめられて離婚したのに、また苦しめられるとは。
■回答
1 ご心中お察しします。あなたが理不尽だと感じているその感覚に、私は心情的には共感できます。しかし、ここであなたが方針を誤るととんでもない結果になるので、心情部分はしばらく脇に置いて、あなたの質問に対する私の結論をまず率直に申し上げます。がまんしてお聞きくださいね。
2 質問への結論
(1)「調停委員は相手方の言葉を鵜呑み(相手の言葉だけで証明書もないそうです)にし、私には私の再婚相手が子ども2人を養子縁組しているので、裁判官の審判にかかると養育費が0円になる可能性が高いので、ある程度の額で妥協しなさいと言います また、養子縁組してるから、減額は当然・・・。」
→私は、養子縁組を維持される限りは、調停委員の意見に従うしかないと考えます。
(2)「次回の調停までにはまだ時間がありますので、(1)、(2)[元夫の収入減や借金による支払困難という嘘]については、調べたら明らかになりますが、調停中に当事者が調べても(証拠を得る)良いものなのでしょうか?または、調べても無駄なことでしょうか?」
→調べることは是非必要ですが、養子縁組を維持されたままでは調べても無駄になるかもしれません。
(3) 「今の夫と私の子との養子縁組を一旦解消しようかとも思いますが、今の段階では遅いでしょうか?」
→養育費だけのことを考えると養子縁組の解消を今すぐすべきでしょう。遅いことはありません。ただし、お子さんの身分関係を不安定にすることになりますから十分な配慮が必要です。
3 理屈について少し説明します。
あなたのお子さんには、離婚の際に親権を失った実父と養子縁組によって親権を獲得した実父の二人の父親が存在します。
この場合には、養父の扶養義務が実父のそれに優先します(仙台高等裁判所昭和37年12月12日決定、札幌家庭裁判所小樽支部昭和 46年11月11日審判、長崎家庭裁判所昭和51年9月30日審判などが先例としてあるようです)。「裁判官の審判にかかると養育費が0円になる可能性が高い」という調停委員の言葉は正確なのです。養父は、わざわざ子の面倒を見るため養子縁組をしたのだから、こちらの義務を優先させるのは当然という考え方のようです。養父の扶養義務が優先する限り、実父の扶養義務は眠った状態になってしまいます。
4 しかし、養父が死亡したり、失業したりして、そちらから十分な扶養が得られない事態が発生すると、眠っていた実父の扶養義務が目覚めるのです。離縁によって養父がいなくなっても同じことになります。したがって、「今の夫と私の子との養子縁組を一旦解消しようかとも思います」というあなたのお考えも有力な選択肢の一つでしょう。
5 元夫は二重の布陣で養育費減額を求めています。第1陣は養子縁組みという新たな事態による扶養義務の終了、第2陣は実父側の経済的困窮による扶養能力の喪失という主張です。
第2陣の実父側の経済的困窮による扶養能力の喪失という主張が通ってしまうようだと、離縁という戦術で敵の第1陣を打ち破っても、結局養育費の減額がある程度認められることになってしまいます。
これを避けるためには、「[元夫の収入減や借金による支払困難という嘘]については、調べたら明らかになります」というのであれば、必死で調べて下さい。元夫の収入減や借金による支払困難がある程度本当だとしたら、元夫に対する養育費請求を維持するために離縁まですることに何の意味があるのということになってしまうでしょう。
6 子連れで離婚した女性との結婚を決意する男性の中には、継子(妻の連れ子)のままでは、母親が結婚で姓を変えると母子が姓を異にすることが可哀想だと考えたり、いずれ妻と自分の間にできるかも知れない実子と分け隔てなく育ててやろうと考えて、継子と養子縁組をしようとされる方が少なくありません。そのような優しい心根の男性を伴侶とすることができたあなたは何物にも代えがたい宝物を手にされたのかも知れません。そして、お子さんにとってもそのような養父さんは宝物なのです。
離縁は、実父への養育費請求のためには必要なことですが、他面、お子さんからこの宝物を奪うことにもなります。なんとも悩ましい決断です。
私は、過去にあなたと同じような立場に立たれた女性側についた経験を持っています。そのケースでは、諸般の事情もあって、養子縁組を維持される決断をされました。
最低限、次のような点についての慎重な検討をされるべきです。
(1)本当に養父の経済力からみて実父の養育費をあてにするしかないのかどうか。
(2)実父に支払能力が本当にあるのか
(3)身分関係がころころ変わることが子供に与える悪影響をどのように評価するか。
なお、離縁すると養子は養子縁組前に名乗っていた姓に戻ります。あなたと同じ姓に再び戻すには家裁で氏の変更許可を受ける必要があります。環境変化に過敏に反応しやすいお子さんの場合はより繊細な配慮が必要でしょう。
7 あなたにとっては非常にしんどい決断になりますが、ここは調停委員や裁判官、現在の夫(養父)のご意見を十分聞いて、よくよく熟慮して決断して下さい。
うまくいくことをお祈りいたします。お大事に。
■このQ&Aは、的場が、「bengofuji」のペンネームで「@nifty教えて広場」に回答した記事を、個人的にコレクションしているものです。また、質問部分については、長いすぎるものや質問者を特定する手がかりになりそうな記載は適宜短縮等しております。
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