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2011年12月30日 (金)

法曹養成制度の混乱と法の支配

法曹養成制度の混乱と法の支配
岡山弁護士会会長的場真介

 若者がどのような職業をめざすかということは、その時代の空気、支配的な価値観を反映してきた。戦争の時代には才能ある若者はこぞって軍人をめざした。高度成長時代には、多くの才能ある若者が理科系の職業に集まった。戦後の平和な時代を通じて、法曹になるための司法試験には500人ほどしか合格しない試験に4万数千人もの若者が挑んできた。
 ところが、ここ数年、新司法試験の合格者数が2000人以上にも拡大し、「広き門」になったにもかかわらず、法曹をめざして法科大学院を受験する若者が目に見えて減っている。

 法曹はこの国に法の支配をいきわたらせ、国民を様々な社会的リスクから守るために、仕事をしている。法曹の仕事が魅力を失い、法曹の世界を目指す若者が減るということは、長期的には国民の生命身体財産を守る基本インフラの一つである司法を脆弱化することにつながりかねない。
 「理不尽なことばかりが多いこの社会を何とかしたい。」と正義感をたぎらせた数多くの若者が法曹の仕事を目指すことによって、司法の分野に優秀な人材が集まらないことには、司法試験合格者の数だけ増やして水ぶくれ状態をつくっても良いことにはならない。
法曹への参入障壁を取り払って自由競争原理を導入しようとした一連の改革ではあったが、自由競争原理万能の思想の粗雑さばかりが露呈する結果となっている。
 法の支配を社会の隅々にまで及ぼすことは国民に多大の福利をもたらすものだし、そのために法曹の着実な増加は必要なことであるが、それは法曹に対する社会基盤の整備と社会需要の拡大をにらみながら合格者数を加減する巧妙な調整機構を最初に構築したうえで行うべき作業であった。ましてや、正義感と才能にあふれた多くの若者たちを使い捨てにするような思想を前提にして進めるべきではなかった。国が、礼節をわきまえて若者に呼び掛けるならば、我が国の心ある若者は、必ずこれに応えてくれると信じる。
 『法の日』は,昭和3年10月1日に陪審法が施行されたことに由来する。「国民主権のもとに,国をあげて法を尊重し,法によって個人の基本的権利を擁護し,法によって社会秩序を確立する精神を高揚するため」に設けられた記念日である。この記念日にあたり、日本の多くの若者が理想に燃えて法曹をめざしてもらえるように、同時に国民の理解も得られる制度になるように、国民主権と法曹のあり方について見つめ直してみたい。
【岡山日日新聞】

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